鹿児島第一中学校職員が、週2回、リレーでお届けするフリーメッセージです。
師走を迎えたばかりの今日は小春日和のほのぼのとした一日だった。自転車通勤の私は手袋もウインドブレーカーも脱ぎ捨ててまるで十月初旬の朝の如く軽快にペダルをこいで学校へ向かった。期末テスト二日目。午後になると生徒たちは学校から解放される。とはいえ明日のテストのために当然勉強に専念せねばならない。ただこんな日はやわらかい初冬の日ざしを浴びてゆっくりと走り、いい汗をかいて再び机に向かい勉強を再開してほしい。あの作家村上春樹氏も集中力を養成するのにランニングほど絶大な力を発揮してくれるものはない、と絶賛しているのだから。
思えば今年は人生最大の試練を与えられた。家族が生死の境をさまようという衝撃。
―死が近い、今すぐに親族を―。
唐突な医者の静かな言葉。深い沈黙と絶望、そして虚無。……やがて奇跡そして希望。人生が一回きりの有限であることをこの瞬間ほど棘が肌に奥深くつき刺さるように痛切にひしひしと実感させられたことはなかった。
今日はこんな穏やかな小春日和。これからも生徒たちともっと遠くへ走っていきたい。そしてもっと貪欲に学んでいきたい。大切なものはやはり何といっても「健康」。一人一人に与えられた命。その命に感謝したい。心からそう思う。
車 椅 子 た た む 日 暮 れ や 秋 の 聲
(本髙 和弘)